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インタビュー:医薬品のマルチチャネルマーケティングにおけるソーシャルメディアの活用

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新しいソーシャルメディア技術の登場により、医薬品マーケティング担当者が医療関係者(ステークホルダー)にアプローチする新しいコミュニケーション手段が確立されてきています。製薬会社は、ソーシャルメディアの活用に付随する社会的責任に、どのように対応すればよいのでしょうか。

InterviewwithJapaneseKOL

Wiley Interfaceでは、NPO法人ヘルスケアクラウド研究会の理事を努められる笹原英司氏とのインタビューを行いました。「マルチチャネルマーケティングにおけるソーシャルメディアの活用に関するFDA指針(以下、FDAのソーシャルメディア指針)」が日本の製薬会社に及ぼす影響についてと、ソーシャルメディアを活用する機会に関するご意見を伺いました。

 

Wiley Interface:ご自身の活動やヘルスケアクラウドでのご経験について、少し詳しくお聞かせいただけますか?

笹原氏: 私は、NPO法人ヘルスケアクラウド研究会において、主に、東日本大震災と津波被害が医療ITのガバナンス・リスク・コンプライアンス(GRC)管理に与えた影響について取り組んできました。医療全体のバリューチェーンにおける重要なステークホルダーは、医療を利用(消費)する立場の方々です。医療消費者は、健康増進、病気の予防、病気の治療、さまざまな健康状態および慢性疾患の管理について、強く情報を求めています。地震、津波、そして原発事故が起きた後、こうしたステークホルダーは、固定回線およびモバイルのブロードバンドネットワークを介して、公共のクラウドサービスを基盤とするソーシャルメディアを取り入れ、活用してきました。しかし日本では、医療従事者および製薬会社の大半は、ソーシャルメディア・コミュニケーションへの統合的な窓口をもっていません。医療消費者に向けたオンラインコミュニケーションの窓口がないことは、ステークホルダー間のコミュニケーションが断絶していることを意味します。また、医療消費者では、たとえば医薬品や医療機器に関する誤った情報などのソーシャルメディアの抱える潜在的リスクを十分に理解しているひとは、依然として少数派です。ソーシャルメディアは公共のコミュニケーションツールであり、ユーザーはそれぞれの社会的責任を理解していなければなりません。消費者のリスクを最小限に抑えるため、ソーシャルメディアの統合的な管理構造のもとで、標準化されたソーシャルメディア技術を利用することが非常に重要です。

Wiley Interface :「FDAのソーシャルメディア指針」 の重要なポイントをお聞かせください。どういった内容でしょうか?

笹原氏: 米国FDAは、ソーシャルメディアの活用に関連したさまざまなトピックを扱う、4つの指針案を発表しました。

i) 文字数制限のあるインターネット/ソーシャルメディア・プラットフォーム-処方薬および医療機器のリスクおよびベネフィット情報の提示 (Internet/Social Media Platforms with Character Space Limitations – Presenting Risk and Benefit Information for Prescription Drugs and Medical Devices) (2014年6月)
ii) インターネット/ソーシャルメディア・プラットフォーム:処方薬および医療機器に関する独立した第三者による誤情報の修正 (Internet/Social Media Platforms: Correcting Independent Third-Party Misinformation About Prescription Drugs and Medical Devices) (2014年6月)
iii) ヒトおよび動物用処方薬および生物製剤に関するインタラクティブ・プロモーショナル・メディア利用の市販後申請の規制要件 (Fulfilling Regulatory Requirements for Postmarketing Submissions of Interactive Promotional Media for Prescription Human and Animal Drugs and Biologics) (2014年1月)
iv) 処方薬および医療機器の適応外使用に関する自発的な情報提供要求への対応 (Responding to Unsolicited Requests for Off-Label Information About Prescription Drugs and Medical Devices) (2011年12月)

2014年1月の「ヒトおよび動物用処方薬および生物製剤に関するインタラクティブ・プロモーショナル・メディア利用の市販後申請の規制要件」が最も影響が大きいと思われます。この指針案では、新しいデジタルマーケティング・メディアミックスが扱われているからです。これは、自社のウェブサイトという企業が「所有する」メディア(Owned Media)、企業が広告費を支払って「買う」メディア(Paid Media)、口コミなどを通じて企業が評判や知名度を「得る」メディア(Earned Media)などを組み合わせたものです。

Wiley Interface : 日本では、「FDAのソーシャルメディア指針」と同様の規制は、どういった状況にありますか?

笹原氏: まず日本の状況として、厚生労働省は2009年2月に公式のYouTubeチャンネルを開設しました。そして、H1N1型豚インフルエンザウイルスの拡大が懸念された2009年4月以降、この問題への対応に活用しています。また、2010年9月には、迅速な情報共有を目的として、公式のTwitterアカウントを開設しました。厚生労働省が目指しているのは、重要な情報を効率よく一般市民に伝達することと、ソーシャルメディアを活用して新しいコミュニケーションチャネルを設けることです。

しかし、厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(PMDA)が規制する医薬品および医療機器の販売促進、ラベル表示、適応外使用の情報に関し、ソーシャルメディアの活用について公式のガイドラインはありません。日本にソーシャルメディアの標準ガイドラインがないことは、規制対象製品に関する規制当局-医療消費者間のインタラクティブコミュニケーションの課題といえます。厚生労働省は、今後の米国の動向に強い関心を寄せています。

Wiley Interface : 「FDAのソーシャルメディア指針」は、日本の製薬会社にどのような影響を与えるのでしょうか?

笹原氏 : 現実として、日米両国の医療消費者が、一般的なソーシャルメディアサービスを利用できる状況にあります。

日本を拠点とする大手製薬会社は、米国市場の売上に対する依存度が高く、その日本本社は、グローバルレベルでソーシャルメディアの管理状況を監視する必要があります。日本以外の製薬会社のほとんどは、米国での新規承認薬について、その管理に関わるライフサイクル全体でソーシャルメディアを活用しつつあります。そして、こうした製品は、遅かれ早かれ、日本市場にも入ってきます。ソーシャルメディアの活用におけるベストプラクティスの共有が、全世界的で不可欠となっています。

Wiley Interface : 「FDAのソーシャルメディア指針」 により、日本の製薬会社の状況は楽になるのでしょうか、それとも厳しくなるのでしょうか?

笹原氏  : ソーシャルメディア・コミュニケーションは、製薬会社を取り巻くさまざまなステークホルダーに利用されています。このFDA指針が施行されれば、各ステークホルダーの役割をまたぐリアルタイムでのアプローチが求められるでしょう。企業および製品の情報伝達に利用されている現行の組織構造やIT構造のままでは、難しい状況に置かれると思います。

Wiley Interface : 日本の製薬会社は、「FDAのソーシャルメディア指針」に伴う課題を、どのように乗り越えればよいのでしょうか?

笹原氏 : 研究・開発、製造・流通、販売・マーケティング、薬事を含む、医薬品のバリューチェーン全体で、ソーシャルメディアを活用していくことが課題となります。場合によっては、企業レベルで組織構造およびIT構造の改革が必要となるでしょう。

Wiley Interface : 「FDAのソーシャルメディア指針」により、チャンスは生まれるでしょうか? もしそうなら、恩恵を受けるのは誰でしょうか?

笹原氏 : ソーシャルメディアは、従来型の労働力と紙媒体の資料に大きく依存する製薬会社が、消費者主導型でデジタルベースかつリアルタイムのマルチチャネルマーケティングに着手する機会ともなります。

その恩恵を第一に受けるのは医療消費者であるべきです。そして、消費者が満足することによって、製薬会社の商業的価値と社会的価値が生まれます。

Wiley Interface : 今後数年間のヘルスケアクラウドについて、どのようなトレンドを予想されますか?

笹原氏 : ソーシャルメディアの活用が成熟期を迎え、モバイル機器(スマートフォン/タブレット、ウェアラブルセンサーなど)の普及も拡大することで、クラウド上のビッグデータの量、種類、速度(3V)が強化されるでしょう。コントロールしにくいクラウドコンピューティング環境においてビッグデータのベネフィットとリスクのバランスを取るには、ソーシャルメディア管理者とデータサイエンティストが消費者主導型の医療産業改革のために連携することが重要になります。

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